HP独占インタビュー【rice活動休止について】
第4回連載「海外見聞録」
第3回連載 特別企画「rice×ACID」
「Sing you」発売記念インタビュー
2010年4月14日、2ヶ月連続シングルリリースの後編、「Sing you」が発売されました!タイトル曲「Sing you」を始め、2スタイル(限定盤・通常盤)に収録された全4曲には、リアルなriceの想いがギッシリ。オフィシャルインタビューでは、これらの曲が1枚にまとまったいきさつや完成しての手応えなどをたっぷり解剖。結成9周年を迎え、来たる10年目に向けてノンストップで動くriceの“現在(いま)”に迫るロングインタビューです。──連続リリースの後編がついに世に出ました! タイトル曲の「Sing you」はライヴではおなじみのナンバーだけど、今回、シングルにしようと思ったいきさつは?
有紀:……ノリ。
──ノリですか(笑)。
有紀:2ヶ月連続リリースが正式に決まった時、1枚ぐらいはHIROが手がけた曲にしてもいいんじゃないかって話を……たしか、ご飯を食べながらしてたんだと思う。で、“じゃ、そうしちゃおうか”っていう流れになったというか。
HIRO:それと、先に出す「Lovers」と対比した時に、ヴァリエーションの振り方としても「Sing you」はいいんじゃないかとも思ったしね。
──しっとりしたバラードの「Lovers」と、軽やかな「Sing you」。riceの振り幅を感じさせるにはいいバランスかもしれないですね。そんな「Sing you」をタイトル曲にしたこのシングル、制作を通して得た手応えはあります?
有紀:前回のシングルは、「Lovers」もそうだし、カップリングの「リルゴ・マキアート」にしても、アコースティックタッチの曲が多かったから。今回の場合はわりとロックなテイストが軸にあるから、作ってる時も、“とにかく派手さで勝負するのがカッコイイだろう”と思って……制作上の苦労はあんまりなかったかな。
──勢いでやれたというか、遠慮なく盛っていく作業だった?
有紀:うん。盛って盛って盛っていく感じ。でも、“ライヴで再現できないサウンドはどうかな…”という考えが根底にあるから、現実的且つ妥協の無い音の最大数で盛ったっていうか。
HIRO:「星に願いを」を最初に録ったんだけど、初っぱなから派手な作り方だったよね。
──「星に願いを」は、「砂と風」とともに通常盤に収録されているカップリングですね。限定盤のカップリングには「STAY」のアコースティックヴァージョンが入っているけど、収録曲の振り分けについてはどう考えたの?
HIRO:のちのちまで流通するのは通常盤でしょ。だから、限定盤に新曲を1曲入れるのは気が引けたというか。“限定盤だけで終わらせるのはもったいない”っていうことにならないように、パンチのあるアコースティックヴァージョンを入れたらいいんじゃないかっていう話になって。
有紀:今、リアルタイムでriceを応援してくれてる人たちのテンションが上がるような曲を入れたいなと思って、どの曲にするか話し合ったんだよね。「STAY」を推したのはHIROだったんだよ。
HIRO:今まで出してない楽曲の中で、アコースティックにしてもパンチがある曲って何かなと考えたら……“あ、STAYがあった!”と思ったんだよね。
──この曲はライヴでも定番の人気曲だし、音源化されていないこの曲の収録は、アコースティックヴァージョンとはいえすごく歓迎されると思う。
HIRO:人気のある曲だし、限定&通常盤を共に買ってくれる方々にも満足してもらえるかなって。
──ライヴではたいがいオーラスで演奏されるアッパーなロックナンバーだけど、アコースティックで聴くとまた違った味が出て良いですね。通常のヴァージョンだと背中を押されるような強さがあるけど、アコースティックだと包み込んでくれるような包容力があるというか。
HIRO:今までトライしてきたアコースティックヴァージョンともちょっと毛色が違うんだよね。
有紀:ちょっとかわいく作ってみた。
──まさに限定盤ならではのスペシャルな音源。そして、通常盤に入るカップリングの2曲、「砂と風」「星に願いを」に関しては……両方とも新曲だよね?
有紀:うん。「砂と風」は4~5年ぐらい前に作ってた曲ではあるけど。
──この2つの新曲、個人的な感触ではあるけど……すごく両極だなと思いました。「砂と風」にはいわゆる“rice節”を感じたし、「星に願いを」には新しい一面を感じたというか。
有紀:自分でもそう思ったよ。「砂と風」は、“ああ~、riceっぽい”って思う人が多いかなと思うし、「星に願いを」は自分たちとしては珍しいタイプだなって。
──「星に願いを」は、後日UPする予定の“春の好き間インタビュー”にも出てくるけど、バンドのメンバーさんからもすごく評価が高いんだよね。
HIRO:そう。評判いいんだよね。
──特に、ふーみんさんが絶賛してたよね。
有紀:“グッとくる”って言ってたよね。そんなこと言われたらこっちがグッと来ちゃうよね(笑)。でも、一瞬、戸惑いもあったの。
──どんな?
有紀:この曲は、一番最後に収録することが決まったんだ。先に「Sing you」と「砂と風」を入れることが決まって、次に、限定盤に「STAY」のアコースティックヴァージョンを入れることにして……。“そのラインナップに負けないような形での新曲を作ろう”っていう方向性だけがあった中で、「Sing you」と「砂と風」とも相性が良くて、ちょっと聴きごたえのあるものを書いてみようと思ったの。でも、作ってみたら、“メロディーが明るいなぁ~”っていう戸惑いが。
──riceの楽曲としては異色かなっていう疑問符が出た?
有紀:でも、詞を綴っていくとしっくりくるし、思ってたような明るさじゃなく、優しさみたいな部分が前に出たから良かった。これもひとつのriceのパターンだなって、“有紀会議”の中で、GOっていう決断が出た。
──有紀会議?
有紀:頭の中に7~8人有紀がいて会議を開くの。で、過半数の有紀が“ま、いいんじゃない?”って。中には話を聞いてないヤツもいるんだけど(笑)、有紀たちの反応を踏まえた上で、最後はホンモノ有紀の自分の判断で入れることにした。で、実際、ライヴでやったりすると、思った以上に手応えがあるんだよね。歌いがいがあるというか、バンドもまとまりやすくて、予想以上にロックなサウンドとグルーヴだった。
──その感触がバンドメンバーさんからの好評の理由なのかもね。
有紀:かもしれない。だからこの曲は、音源先行ならではの利点がこれからどんどん見えてくるかもしれないなって。
──発表後、ライヴでやったりしていくことで、みんなで一緒に育てていくという。
有紀:そうだね。
──シングルやアルバムといったパッケージのために新曲を書き下ろす場合って、1枚のバランスを考えたりするの?
有紀:打ち合わせの段階で一応オーダーを取るから、たとえば、“ゆったりしたビートの曲が叩きたい”って言われれば、“じゃあ、そういう系の曲を作るよ”っていう話をするんだけど……。でも、たま~に、全然違うものが上がっちゃったりはする(笑)。で、言ってたものと真逆の仕上がりになったものの、“これはこれで良いからこれでいこう”っていうことになることもあったりするかな。
──今回も、最初は戸惑いがあった曲もありつつ、結果、すごくバランスの良い1枚になったし。これはriceマジックだね(笑)。
有紀:うん。良いシングルになったと思う。レコーディング段階からすごく手応えがあって、HIROとふたりで、“「星に願いを」はタイトル曲にしてもイケたね”っていう話をしてたぐらい。
──「砂と風」もいけそうだと思ったけど。
有紀:そうなんだよね。自分たちとしては、カップリングにするっていうアタマで制作に入ってるから気づかなかったりするんだけど……今回のシングルは、“3曲どれでもタイトル曲になりうる”って周りに言われてて。すごくビックリしつつ、いろんな発見があって勉強になってうれしい。
──では、ここからはここ一連の春の流れをさらってみたいと思います。2ヶ月連続のシングルを通して、今まで以上に積極的に動いたrice、メディアにもいろいろと登場していたけれど、そういった場でriceに対する評価はどんなものだと実感した?
有紀:聞いていて“オッ”と思ったのは……“思った以上にしっかりと考えていらっしゃるんですね”と言われた時。
HIRO:あはははは!
有紀:取材をしてくれる人は、YouTubeとかで過去のライヴをおさらいして、前情報としてインプットして来てくれたりするでしょ。そうすると、“ここまで真剣に話をしてくれる人だとは思わなかった”とかって言われたり(笑)。
──ライヴのMCなりではサービス精神で突っ走ってるところがあるもんね(笑)。
有紀:それ以外は……意外と、目新しい感想っていうのは特になかったかな。逆に言うと、こわいぐらいに1本の筋ができてきてるっていうことかもしれない。
──初めて話をする人でも、久しぶりに会った人でも、みんなの口から出てくる言葉はいい意味で同じっていう。
有紀:うん。たとえば、歌に関して言えば、“聞き応えがある”とか“安心して聞ける”とか。みんなが口をそろえて言ってくれる。riceに対する評価がだんだんと統合されてきてる感じがするというか、ブレがなくなってきた。
──以前は良くも悪くもいろんな評価があったとか?
有紀:そうだね。昔は、わりとしょっちゅう“難しい”っていうことを言われてたと思う。でも、最近は、“メロディーラインが難しくて到底歌えなそう”っていう技術面での難易度を指摘されることはあっても、曲として聴いた時の感想は、“歌詞に共感できました”とか、そういう言葉を多々貰えてる。まあ、自分で昔を振り返ってみても、確かにって思う節もあるけど(笑)。
──曲の内容的な難解度が?
有紀:自分の言いたい事がまとまらず、結局この詞は何が言いたいんだろうって思うような歌詞も多かったし。今は、書きたい(伝えたい)ものがあるから曲を作ってる。だから“共感できる”って言ってもらえてるのかなって。で、“書きたい”っていう衝動がなかなか鎮火しないもんだから(笑)、いいペースで曲が書けてるし。
HIRO:ここ最近はいつになくいい感じだよね。
有紀:うん。最近はすごくいい。でね、“難しい”って言われてた昔の曲も、特に詞を書き直すことなく今でも歌ってるでしょ。そうすると、不思議なもので……“すごく共感できます”って言われるの。時代の流れもあるかもしれないけど、間口っていうものは広く成長していくんだなって実感してる。
──来たる10周年に向け、いい風が吹いていますね。
有紀:そうなんだよね。4月で丸9年を迎えたんだもんね。
──riceのふたりもついに20代最後(しみじみ)。
有紀:そうだよ、もうじき29歳だよ。櫻井・ニック・有紀って呼んでもらえれば。ついに俺にもミドルネームが!(笑)。
HIRO:俺はまだしばらくニッパだけどいい?(笑)
──ふたりがそろってニックになる頃、riceがどんな状況にいるか、楽しみですよ。
有紀:今後の予定はもう少ししたら決まると思うけど……夏にはまたCDを出したいねなんて話もあるし、ライヴもたくさんやりたいっていう希望もある。今年こそは…自身の誕生日は、riceを応援してくれてる皆と共に過ごしたい。セブンイレブン(7月11日)にライヴがやりたい。
──誕生日ライヴ!!初めての試みだね。
有紀:そうなんだよね。意外にもやった事なかったの。今年はわりと、なんでもかんでも新しいことに挑戦していってるかもね。連続リリースもそうだし、2泊3日の“好き間”、“Stamp!!”も。
──挑戦することで自分たちの可能性は広がる? たとえば、2泊3日の“好き間”は、体力的にも結構ギリギリだったんじゃないかと思うし……。
有紀:ギリギリだったけど、やれることがわかったから自信にはつながった。
──9年も同じバンドを続けて来て、まだまだやりたいことがたくさんあるって幸せなことだね。
HIRO:そうだね。
有紀:全然飽きないし、意外とダレない。ありがたいことに、節目節目でケジメがつけられてるっていうのかな。
──そういう意味でも、riceの新しい面や挑戦が詰まってるシングル「Sing you」は、多くの人に聴いてもらいたいね。
HIRO:やっぱり、それが一番。
──では最後に、オフィシャルインタビュー恒例の“ホメ殺し合戦”を……。
有紀:今日は(言葉にしなくとも)目でホメてたからね。
HIRO:あはははは! すごいね、そうか~。ま、威圧感は感じてたよ(笑)。
有紀:でしょ?
HIRO:ただ、有紀が見てないところで俺も結構目線送ってたよ。
有紀:ああ~、確かにそれはビシビシ感じてた。俺、感じやすいし、そういうのには敏感なタイプだからね。
HIRO:そうだね、有紀は、何でも感じやすいタイプだからね。