HP独占インタビュー【rice活動休止について】
第4回連載「海外見聞録」
第3回連載 特別企画「rice×ACID」
「Lovers」発売直前インタビュー
ついに、連続リリースの第一弾、「Lovers」が発売されます!収録曲を選んだ経緯やそれぞれの曲にかける想いをひもとき、改めて、この作品の魅力を探ります。──ホームページをチェックしている人は、3月10日発売のシングル「Lovers」のリリース経緯について大体理解していると思うんだけど。「Lovers」と「リルゴ・マキアート」のどちらをシングルにするか、ファンのみんなの意見を聞きつつ(特設サイト『どっちのriceショー』にて)、結局2曲とも収録することになったのはどうして?
有紀:どっちにするかすごく悩んで、『どっちのriceショー』を立ち上げて意見を募ったわけだけど、みんなの声を聞いてしまったら、“これは両方出すべきなんじゃないか”と思ってしまったの。
──“両方聴きたい”っていう声が多かった?
有紀:そう。どっちかを今後のリリースに回そうっていう発想にはつながらず……この2曲は同じCDの中に入れるべきなんだなっていう考えが見えたから。“どっちにする?”っていう名目で始めたものが、結果、どっちもになってしまったことはゴメンねといえばゴメンねなんだけど。やって良かったとは思っていて。こういう形になったことは、みんなにも喜んでもらえたらいいなっていう願いも込めてるから。
──投票を通じたみんなからの声で、印象的だった言葉はありました?
有紀:全5回の段階を踏んで展開させてもらった中で、みんなの意見が変わっていくのがとても興味深かったかな。
──というのは?
有紀:まず、“フィーリングでどう思うか”っていうところから始めて、そのあと、リリックを見てもらったり試聴できるツールを設けてみたりしながら徐々にみんなの反応を聞かせてもらってたんだけど……。やるごとにみんなの反応も変わるんだよね。時間が経過するにつれて、“「Lovers」が絶対にいいです”って言っていた人が、“もしかして、「リルゴ・マキアート」もいいかも”……っていう感じに。その心の動き方がすごく印象に残ってるかな。
──この2曲に限らずだけど、音楽って、聴く時期やシーンによって、感じ方が変わるものだからね。
有紀:そうだね。特にriceのバラードは、1曲1曲に対するリスナーひとりひとりの思い入れがすごく強いというか……曲を聴くことに対して、ステキな心持ちで向き合ってくれる人が多いから。だから実は、この2曲を音源化するのはまだ早いかなっていう気が少なからずあった。“まだ温めていてほしい”っていう声もあって、そこにジレンマも感じてはいたんだけど……。でも、少なからず“今かな?”と思えたんだから、まずは一度形にしてみてもいいのかなって。それに、追々また違った形やタイミングで届けたいと思えば、それもできるバンドでもあるわけだから。
──一歩を踏み出すことで見える景色もあるだろうし、躊躇するよりも、そこから広がる世界を楽しんでいけたら……っていう。
有紀:暫定的な形ではまずあるけど、今回収録したどの曲にも今のベストは尽くせてる。そういう意味で、“今の作品の形”“今のカラー”っていうことで聴いてもらいたいな。
──では、「Lovers」と「リルゴ・マキアート」の両曲が1枚に入ることになったいきさつはここまでにしておいて。作品作りについての話を聞こうかな。この2曲を入れることが決まって、1枚のCDとして、どんな感触を持った作品にしたいと考えました?
有紀:いつもと違うバリエーションのつけかたを意識したかな。
──いつもと違うバリエーションって?
有紀:シングルって、曲数が少ないだけに、いろいろ入れたいと思って、バラード+激しい曲+ポップな曲……とかって考えることが多いじゃない。でも、今回はそういった色分けの仕方は違うかなって思ったの。もっと大きい視点でのバリエーションをと考えて、通常盤と限定盤の両方とも、全曲バラードっぽい曲で揃えてもいいのかなって。その上で、録り方や歌い回しを意識した。
──曲調は通してゆったりでも、メリハリはしっかり持たせて。
有紀:そうだね。
──初のカバー曲(一青窈「ハナミズキ」)を収録曲にプラスしたのも、メリハリやバリエーションの付け方を考えた上で?
有紀:いや、これを収録したのはごく簡単ないきさつから。レーベルの人たちとご飯に行った時、“有紀くんの歌を聴かせてよ”って言われて、カラオケに行ったんだ。自分の持ち歌を歌うのもちょっとなあと思って、何の気なしに歌ったのが「ハナミズキ」。で、“これ、良いからriceで出そうよ”って話になったの。
──何かピンとくるものがあったのかな。
有紀:すっごいしっくり来たみたいで。それ以上にうれしかったのは、“この曲、HIROちゃんが叩いたらカッコいいだろうね”って言ってくれた人がいたこと。カバーって、興味はあったものの、人様の作品で勝負をかけるほどの図々しさは持ち合わせてなかったから……今までやってこなかったんだけど。そこだけ理解してもらえればやりますっていう形で了承したんだ。だから、限定盤に収録することになったの。のちのち、“ハナミズキのrice”と言われてしまうのもなんだし……あくまでも僕らの引き出しのひとつとして捉えてもらいたいなって。
──“この曲をHIROちゃんが叩いたらカッコ良くなるだろうね”と言われたHIROくんは、初のカバーをこの曲で挑戦したことをどう感じました?
HIRO:俺は、これまでに何度か有紀が「ハナミズキ」をカラオケで歌ったのを聴いたことがあったから。それをCDっていう形にするのもおもしろいかなとは思ったんだよね。実際完成してみて、なかなか良い仕上がりになったというか……アレンジも良かったしね。
──ちゃんと、「riceのハナミズキ」になっていると思いましたよ。
HIRO:うん。そのへんがうまくまとまったことで、カバーをやる上でのリスクは避けられたかなと。
──で、もう1曲のカップリング、「wipe」。これはライヴで発表してきた曲ではなく、いわゆる書き下ろしですよね。riceはいつも、新しく生まれた曲は惜しみなくライヴで発表してきたから。だから、まっさらな新曲を音源で聴いて、ちょっと新鮮でした。
有紀:音源が先行するって、ずいぶん久しぶりのことだからね。というのも、ライヴよりもリリースに対するスケジュール進行のほうが詰まってたってこともあってこういう形になったんだよね。でも、音源先行は本来あるべき形のひとつではあると思うし、僕らの音楽を聴いてくれる人は、ライヴに来てくれる人だけに限らないから。そういう意味で、音源の楽しみ方を再認識してもらいたいなっていう想いもあって。
──みんな、どういうふうに聴いてくれるかな。
HIRO:ねえ。
有紀:曲調もリリックもいつもの感じとは全然違う曲だからね。
──たっぷりじっくり聴くというより、いい意味でさっくり聴ける感覚が新しかった。
有紀:今回、カバーに初トライしたでしょ。だから、カバーと同じくらい、自分たちの中で新しいものに挑戦したかったっていうか。そういう意味でもすごく好きな曲になったかな。
──意欲的に挑戦した新しさと、聴き手との信頼感の中で育まれてきた「Lovers」と「リルゴ・マキアート」。全4曲がうまく同居したステキなシングルになりましたね。
有紀:もう思い残すことはない。
──いやいや、まだ早いから(笑)。4月にもシングルが出るし、その先もいろいろ見越してるだろうし。
有紀:そうだね。今後の視野の真ん中にはアルバムもあるわけだしね。今、すごく忙しいけど、こういう時にでもちゃんと曲は生まれてくるんだね。なんかこの頃、ビックリしてる。もしかして自分、才能あるんじゃないかな? と(笑)
──今頃気づいたの?(笑)
有紀:うちの相棒は、俺のこういうところに惹かれて一緒にやってるんだろうなあと思って。
HIRO:あれ? 俺を褒めるかと見せかけて、自分なんだ(笑)。
有紀:今日は自分を褒めようかなと……
HIRO:ま、俺も見る目あるっていうね(笑)。だって、もうすぐ(レパートリーが)100曲ぐらい……?
有紀:もう80曲は超えてるから、100曲までもうすぐだよ。
──たしか、7年目ぐらいの時に、“今70曲あるから、10年目で100曲になればいいね”って言ってたんだよね。
HIRO:どんだけ作ったんだよ~。
有紀:きっとまだまだ出てくるよ。日常には言葉(歌詞)のヒントがいっぱい。
──どんな時に言葉が降りてくることが多いの?
有紀:一番多いのは電車の中。それと、地方遠征移動中の車の中とか。
──景色や日常の風景って、誰でも触れているものだけど……そこから言葉を生み出せる人ってごく少数だと思うから。そういう意味でもやっぱり才能があるんですよ。
HIRO:そういうことだよね。
有紀:えへへ(照)。俺、褒められはじめると褒められ続けないと寂しくなっちゃう。だからさ、褒められ続けるためにも、曲を書き続けないといけないんだよね。
HIRO:ある意味、良い循環。
有紀:そうなんだよ。褒められて伸びるタイプだからさ。“なにくそ魂”とか、微塵も持っていないから(笑)。
──(笑)。4月14日には「Sing you」もリリースされるし、褒められる要素はこれからも盛りだくさんってことで。そうそう、3月26~28日には『春の好き間』もあるし、ここでも褒められちゃいましょうか(笑)。なにせ今回は2泊3日。以前、“ファンのみんなに今度は2泊でやってほしいって言われたけど、そんなことしたらスタッフも自分たちも(ハードワークで)死んじゃう”って言ってたと思うんだけど……。
有紀:そうなんだよね。ちょっと、死にに行こうかなと思って(笑)。
──どんな企画でもてなす予定?
有紀:皆が楽しみにしていてくれてるお馴染みのメニューからガラリと変えるわけじゃなく、更に内容を増やしてみようかなと思って。何か新しいこともやってみようかなと……。ただのんべんだらりと2泊するだけじゃもったいないでしょ。僕ら以上に来てもらうお客さんにもグッタリで帰宅してもらおうかと(笑)。
──今年もriceは本気度MAXってことで、全力でみんなにぶつかっていくということで。みんなにも覚悟してもらわないとね!
HIRO:今年はrice史上間違いなく一番忙しくなるだろうからね!
有紀:うんうん。現段階でどうあがいても過去と比べて暫定1位の忙しさだからね!
HIRO:でも、楽しみだね。
有紀:まあ、おまえより俺のほうが楽しみにしてると思うけど。
HIRO:ははは。そこ、張り合うとこか?
有紀:楽しみ方、俺の方が上手そうじゃん。
HIRO:そうかな~。俺も、結構、楽しんでるよ。
有紀:まあ、分からなくはないけど、その楽しみ方すらも、ちょっと俺に惹かれてるおまえがいることも、俺、わかってるから。
HIRO:じゃあ、俺も、一番楽しむようにするわ。
有紀:まあ、そうだね……ゆくゆくはね、そうなってくれればいいなとは……。
HIRO:ちょっと、(食いつきが)弱くなった(笑)。
有紀:もう、張り合うネタがなくなった。
──じゃ、ネタが尽きたところで今回はお開きということで(笑)。では、怒濤の2010年も思いっきり駆け抜けてください!